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我、汝に為すべきことを教えん

先日、小泉元首相が「音楽遍歴」という本を出した。
音楽好きで有名だった小泉さんがどんな文章を書くのかと興味があって購入したが、さくさくと読む事が出来た。
それなりに面白かったのだが、それ以上に目を引いたのが、ところどころに出てくる注釈である。小泉さんの文章を補足しているようで実はそれ以上のことが書いてあったりする。

その注釈の一つに書いてあった書籍がどうしても読みたくなった。

「我汝になすべきことを教えん」
である。

ブルッフに関する書籍はとても少ない。伝記なんかも邦訳されていないので、彼に関する情報は辞典やCDや楽譜の解説で読み取るしかない。
前述の本の注釈によれば、インタビューが載っているらしい。
出版は2003年。丁度子育て真っ最中!でそんな書籍の情報は知らなかった。
是非手に入れねばと探してみるが、どうやら今のところ品切れで重版は未定との事。図書館を調べてようやく読む事が出来た。

著者のアーベルはアメリカの音楽記者でアマチュアのヴァイオリン奏者でもある。アマチュアだと馬鹿にしてはいけない。ヨーロッパに赴任して師事した師匠の人脈で彼は当時の大物作曲家とのインタビューに成功するのだから。もっとも彼自身も指揮者のニキシュなどと交友があり、そのことも幸いしたのだろう。本書に収められているインタビューは、ブラームス、R.シュトラウス、プッチーニ、フンパーディンク、グリーグ、そしてブルッフ。

特にブラームスとのインタビューは17章中7章と最大のページを割いている。ここでは述べないが、ヨアヒムも同席していて「濃い」インタビュー内容・・・これだけでも読む価値あり。

で、肝心のブルッフ君は1つの章だけなのだが、私にとってはとても嬉しい。
登場してくる往年の名ヴァイオリニストの名前にまず驚く。クライスラー、イザイ、エルマンにティボー、ジンバリスト・・・当時合唱曲の大家として、優れたピアニストとして知られていた彼の周りになんと多くのヴァイオリニストがいることか。

何故ヴァイオリン曲を書くのかという問いに対し、
「ヴァイオリンはピアノより旋律を良く歌う事ができるし、旋律は音楽の魂だからだ」
(本書より引用)

以前買ったCD解説に生前彼が第一番の協奏曲が有名になるのを好まなかったということが書いてあったのだが、ここにはそのような姿は描かれていはいなかった。
ただ、将来自分がこの協奏曲を書いただけの人としてしか人々の記憶に残らないだろうと予言している。当時大変人気のあった作曲家であった(ブラームスよりも人気があったという)にもかかわらず、である。

その曲だけ、ではなかったが、幸か不幸かそれは的中してしまうのだ。

面白い。
読後、第一番かスコットランド幻想曲を聴きたくなった。できればクライスラーとのもの。探してみよう。

できればコル・ニドライのエピソードが・・・、いや、ヴィオラとクラリネットの協奏曲の話も書かれていたら・・・もっと面白かっただろうなあ。

それよりも、重版してくれませんかね、春秋社さま。

我、汝に為すべきことを教えん
アーサー・M・アーベル著
吉田幸弘訳(春秋社)

追記:本文を若干訂正しました。

追記その2:2013年2月、出版館ブック・クラブから大作曲家が語る 音楽の創造と霊感とタイトルを変えて再出版(?)されました。偶然、出版と同時期にふらりと寄った書店で見つけて、即購入。タイトルのせいかスピリチュアル本コーナーにあったのが泣けますが・・・。訳者は春秋社と同じく吉田幸宏氏。ゆっくりゆっくり時間のある時に読んでいます。

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